特別寄稿
ある日の冬壁 「大山北壁別山バットレス中央稜登攀」
武部秀夫
西日本で日本海に一番近い名山があります。
日本海に近いということは、冬季の西高東低の気圧配置になったとき激しい雪山になります。
その山の名は「大山」です。
特に北壁はもろに風雪があたるので、厳しい山になります。冬季の晴天日を狙って、多くの岳人たちが、その山に今でも向かいます。
大山の冬壁は、小ぶりでわがままな美人の山でしょうか。好きな山のひとつです。
2006年の岡山労山隊で行って失敗した「ゴザルカンリ(6275m)」登山が終わってから、冬の北壁によくかよっています。
北壁には、東端の墓場尾根から西端の八合尾根まで、10本のルートがあります。毎年1月から3月の間、3本程度のルートを楽しんでいます。
昨冬のある日の登攀は、雪の状態悪く10時間かかりました「別山バットレス中央稜」が印象的でしたので、記録報告します。
2008年2月3日(日) 岡山(4:00)〜大山元谷(7:00)〜取り付き(9:30)〜登攀終了
(16:10)〜元谷(17:15)〜岡山(21:00)
登攀パーティー:山崎、武部
天気 晴れのち吹雪
記録 岡山をいつものように早朝発。今日は別山バットレスには誰もいない。東となりの弥
山稜には3パーティー、滝沢リッジに1パーティーの状態。元谷避難小屋からは、腰
近くまでのラッセル2時間半。トレースあれば1時間半程度で楽々いけるのだが。
相方も大学山岳部出身なので、ラッセルは強い。交代で進む。取り付きで、ハーネス等つけ
登攀開始。壁の部分は9ピッチ。下部3ピッチはコンテですすむ。ここは雪稜で急峻だが潅木もある。
4ピッチ目から傾斜が増す。バットレス状の中央の急峻なリッジとフェイスになる。
支点が潅木とピッチ切れ目のボルトだけで、高度感あるので、少しはびびるところもる。
8ピッチ目が核心部、リッジ、雪壁、岩(50センチくらいの潅木つかんでのハングあり)を越すと、
別山ピークへの1ピッチ雪壁トラバース。ここで14:30吹雪に急変。
吹雪で視界10メートルの中、ピークからは一旦クライミングダウン1ピッチ。ナイフリッジがさらに2ピッチ。
晴れているとのこの都合3ピッチも、高度感があるところだが、今日はガスでかえってよかった。
後は高度差約150mを登ると主稜線にでた。16:10.ガスの向こうに朧のような幻想的な太陽が少し見える。
一般ルートを即下山。6合目避難小屋でアイゼンはずし、横をトラバースして六合沢へ尻セードで一挙に元谷へ。